チガヤ
硬いアスファルトを突き破って植物が生えてくると、もの珍しさから、話題になることがあります。数年前には、“ど根性大根”の大ちゃんがアスファルトから生えているのが発見され、ニュースでも取り上げられていました。その反面、アスファルトを縫って出てきていても、全く話題にもあがらない植物もあります。
その一つが、ここで紹介する“チガヤ”です。日本では、チガヤは、北海道から沖縄にいたるまで、広く分布し、草地や川辺、道路脇などのいろいろな場所で目にします。古来は、屋根ふきの材料やおやつとして、生活に深く関わり、親しまれてきた植物です。現在では、それらの用途で使われることは殆どなくなりましたが、堤防や畦畔(田んぼのあぜ)を管理する手法として、チガヤの導入が検討されています。
チガヤの防草シートの突き抜け芽の先端が細く尖り、強く押し上げてくるため、強度の足りない防草シートだと容易に貫通します。このように、チガヤが暮らしに密着していた理由、管理用植物として導入が検討されている理由の一つとして、チガヤの“群落形成”の能力が挙げられます。
チガヤは、種子による繁殖も行いますが、地下茎を伸ばすことによっても、繁殖を行います。
チガヤは多年生植物(複数年にわたり生存する植物)の一種で、主に深さ15~40cmの土中に地下茎を持ち、この部分に栄養の大部分を貯蔵しています。チガヤはこの地下茎を伸ばし、土中の生息域を拡大、節から芽を出し地上に群落を作ります。
一年草(種子から発芽し、一年以内に枯死する植物)草本の群落にチガヤが侵入すると、地下茎の伸長に伴って置き換わり、やがてチガヤの集団を形成するに至ります。もちろん、その群落も放置していれば、ススキの草原やササ群落、マツ林へと変わっていくのですが、以前は定期的な草刈りや土手焼きなどによって、チガヤ群落が維持されていたようです。
そのように、暮らしに密着していたチガヤも、現在では、その繁殖力で植込みや管理敷地内の空き地、芝地や民家の庭にも容易に入り込み、場所によってはやっかいな雑草として扱われています。チガヤの雑草としてのやっかいさの一因は、先述の繁殖形態にあります。チガヤの地上部だけを刈り取っても、地下茎が残っている限り、チガヤの群落は容易に再生してしまいます。また、念を入れて地下茎の鋤き取りを行ったとしても、断片が少しでも残っていれば、節から芽がでて、将来的に元通りになってしまいます。
チガヤは目立って取り上げられることは殆どありませんが、最も身近な植物の一つです。チガヤを利用するにせよ、防除するにせよ、チガヤの特性をよく理解し、充分に踏まえることで、上手に付き合っていくことができるものと考えます。
引用文献: 白崎コーポレーション 佐治氏 著